お別れの瞬間
緩和ケア病棟に勤めていると、様々な患者さんとお会いします。
お別れの瞬間もその方それぞれの物語があります。
少し困ってしまう面会の方
遠方から来られた遠い親戚の方は、もうお別れが間近い状況を受け入れられず、「このまま放っておくんですか?点滴さえしてない。何もせんのはおかしい」と声を荒げます。
ご家族は、お別れの準備ができておられるのに、その親戚の方に説明する必要が出来てしまいます。お別れの時は、迫っているのに…です。
傍で付き添われていたのがお嫁さんだった場合は、本当にかわいそうな言い方をされたりします。以前勤めていた病棟では「お別れ会」というものが簡単ではありましたが開かれていて、親戚の方も含めて、病棟スタッフがその方との思い出を話したり、ご家族にお話ししてもらったりしていました。その場面で私は必ず、皆の前で付き添っておられたご家族を労い、エピソードや、旅立たれたご本人が、生前スタッフに何をお話されたかをお伝えしていました。
傍にいることもなかった親戚の方にも、どれだけ一生懸命看病して差し上げておられたかを伝える目的もありました。
ご本人が「ありがとう」と感謝の言葉をお伝えになりたいとは思いますが、ほとんどもう
お話できなくなってしまわれので、私が代弁させていただきます。
微笑ましいお別れの瞬間
お別れの時に高齢の姉にかける弟の言葉に素敵だと思ったことがあります。
最期の時、お別れをしたいと思う方に声をかけて下さるようにご家族にお話しします。飛んでこられた弟さんは、もうお話もできず旅立とうとされているお姉さんに向かって…そばに寄り、手を取って…
「姉ちゃん、よう頑張ったなぁ。あっちに行ったら、俺も間もなく行くと思うけん、ええ席を取っといてよ。頼んだよ」「そしたら、またな。また会おな」と声をかけられたのです。その声のかけ方が愛情に満ちていました。そばにいた人たちから笑顔が見られました。
私たちスタッフは、旅立たれるときに、安心して穏やかに旅立たれるようにパンフレットを用いてご家族にお話ししたりします。このお別れの仕方は誰でもできることではないと思いますが、とても張り詰めた場を穏やかな空気にして下さいました。
お別れの瞬間に間に合わなかった時
「最期の時に、傍に居たかったのに」というお言葉はよく聞きます。
ずっとずっと傍に付き添われていたのに、どうしてちょっと電話を掛けに行った時に旅立ってしまわれるのでしょうか?必ず、間に合わなかったご家族は残念な思いをなさいます。
これは、よくあることでもあります。
とても同感するお話を書いておられた記事に出会いましたので、ご紹介させていただきます。
これは、北海道で在宅医としてもご活躍なさっておられる金谷潤子先生のお話です。
私もそう思います。その瞬間に傍に居られても ご本人とはお話もできません。その時のために日頃何をして差し上げたかが、大切なことなのだと思います。